コラム 帝銀事件とは何だったのか-44 Vol.44 原渕 勝仁さん | GHQ.club

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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-44

VOL.44
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-44

 

 若松監督はピンク映画時代から低予算で早撮りの要領を熟知していた。

 それが〝密室劇〟。それは演劇的手法と考えてもいいのかも知れない。確かに、若松監督の初期の名作と称される『胎児が密漁する時』にしても、『犯された白衣』にしても、ほぼ全編が室内で撮影されたものである。『処女ゲバゲバ』に至っては、当時、若松プロが入っていた原宿のビルの屋上だけで全編、撮影されている。若松監督が構想した七三一部隊の映画も〝密室劇〟にこだわりたいと。つまり、主人公の夫が解剖室で生体解剖をやらされているシーンと、自宅で妻とセックスをするシーン。この二つだけで充分、七三一部隊の悪魔性と、それに心ならずも係わった関係者たちの苦悩が表現できると。だから3000万円くらい用意できれば、充分、撮影から配給までやれる、と監督はわたしに話していた。その金策に走り回っていたまさにそのとき。2012年10月17日。監督は自宅近くで交通事故死してしまうのである。

 福島原発に反対する発言をしていたこともあって、ネット上に〝謀殺〟説が流れたこともあった。確か、事故にあったのは亡くなる5日前。若松映画の常連の、ある俳優と六本木界隈で食事を伴にして次回作の話でおおいに盛り上がって、気分よく、タクシーで自宅である千駄ヶ谷の若松プロに向かっていた、まさにその時のことだ。なぜ、自宅の前までタクシーで行かず、頻繁に車が走る自動車道路でタクシーを降りたのか。監督はタクシーを降りて、少し酔った体でふらふらと道路を渡っているとき、うしろから猛スピードで走って来たタクシーにはねられ、頭を強く打って病院に運ばれた。事故を起こした運転手は70代で、監督と変わらない年齢の初老の男性。謀殺されたとすれば、この初老の運転手が実行犯で、六本木あたりから監督のことを狙ってあとをつけていたことになる。しかし、あの道路で監督が降りることまでなぜ、知っていたのか。勿論、監督の行動は謀殺を狙った者たちなら事前に何から何まで調査して、何度も何度も、現場でシュミレーションをしていたはずだ。六本木方面から千駄ヶ谷の若松プロに帰る場合、確か、夜の8時以降だと、JRのガードを潜って、新宿御苑の周辺にある住宅街に車両は入れないことになっているはずである。あの事故に遭った道路で監督が降りるのは彼らには予想が付いたのかも知れない。実行犯の初老の運転手も、借金その他の家庭環境など背景を調べればヒットマンとして雇われた可能性がなくはないのかもしれない。

 しかし、すべては可能性で監督が原発マフィアに謀殺されたという確たる証拠はあるはずもない。当初、新聞報道などでは、大した傷ではないと報じられていた。二度のがん手術から生還した監督は、殺されても死ぬようなタマではないと、根拠のない確信を、わたしは持っていた。しかし、心配で若松監督の盟友ともいうべき足立正生監督にわたしは電話を入れた。足立監督は駆けつけた病院で、ベッドに横たわる若松監督に何度も「若ちゃん、若ちゃん」と声をかけるが、時折、ぴくっと反応することはあったが、家族の呼びかけにも一度も応えることなく永眠した。監督の頭は脳のなかが血だらけで治療の施しようのないほどであったのだ。

 

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  • 『若松孝二と赤軍 レッド・アーミー』
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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など