コラム 帝銀事件とは何だったのか-37 Vol.37 原渕 勝仁さん | GHQ.club

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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-37

VOL.37
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-37

 

 新宿区戸山にある陸軍軍医学校跡地で人骨が発見された話をした。発見されたのは1989年のことだ。元・看護師の証言に基づいて、2011年2月に再びその近くが調査対象となって、重機が入って掘り返されたが結局、何も発見されなかった。その模様を番組にしようと取材したが、新しい発見がなければ番組にしようもなかった話もした。つまり、まったくの徒労に終わったわけだ。

 しかし、これがきっかけとなり、ある市民運動をやっている人々と知り合うことになる。それが「軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会」。それを紹介してくれたのは、根岸恵子という市民活動家の女性で、それまでもアイヌの人権に関する集会で何度も顔をあわせていた。その彼女から毎月、新宿御苑近くの法律事務所で七三一関連の研究をしている関係者が集まるので、参加しないかとの誘いを受けたのだ。そこに〝人骨の会〟関係者も参加するのだと。

 ちょうど、その頃、あの森村誠一の『悪魔の飽食』の共同執筆者で、わたしがオウム取材でお世話になったジャーナリストの下里正樹氏と新しい企画のことでしばしば会っていた。こんな会があるのなら下里氏も喜ぶだろうと思い、彼をともなってその会に参加した。

 そこは新宿御苑の入り口近くのビルの9階にある「ピープルズ法律事務所」。七三一部隊の被害を受けた被害者・遺族が日本国を訴えた裁判を担当した南典男弁護士の事務所で、その日も、裁判を担当した渡邊春己弁護士、〝人骨の会〟事務局長の鳥居靖さん、そのほか市民団体の関係者が何人も集まっていた。

 しかし、下里氏がなんとも居心地が悪そうにしているし、そこに集まった人々も下里氏を歓迎している雰囲気ではなかった。同じテーマを研究している方々なので、あの『悪魔の飽食』の下里正樹と聞けば、もっとフランクに歓迎的な雰囲気になるものと、わたしは考えていた。しかし、ある意味、下里氏は、七三一に関してあまりにも突出し過ぎていて、地道に活動をしている市民活動家の方々からすると、どこか積極的になれない何かがあるみたいだった。

 オウム事件のときも下里氏は、それはわたしにとっては下里氏がもっともオウムの本質に迫ったジャーナリストであったと当時も今も思っているが、いつも下里氏は筆が走りすぎるというか、正鵠を付いた仮説をずばずば提示してしまうが故に足をすくわれたりする脇の甘い部分があった。あの『悪魔の飽食』の続編で贋写真を掲載してしまったことなど、その最たるものだ。しかし、わたしはそういったフライングも含め、そういった部分があるからこそ、彼には難しい問題を突破する何かがあると思い、いまもわたしの師と仰ぎ、指導していただいている。難解な帝銀事件の真実に迫るにはこういった下里氏のような〝突破力〟が必要だと、わたしは考えている。と同時にこの法律事務所に集まった弁護士・市民活動家の方たちのような地道な活動も無視してはいけないと、いまは強く思っている。

 二回目以降、この会に下里氏が参加することはなかったが、わたしは帝銀事件の真実に迫るのには、どんなことがあっても七三一部隊の研究は欠かせないと思い、これ以降も会に参加している。

 

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など