コラム 帝銀事件とは何だったのか-27 Vol.27 原渕 勝仁さん | GHQ.club

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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-27

VOL.27
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-27

 

 この間も、帝銀事件の弁護団会議は毎月のように行われていた。わたしは、そこに何か新しい発見があるかもしれないと、当初は楽しみに参加していた。しかし、第19次再審請求が提出されたのが1989年、つまり、平成元年のこと。20年以上に渡って、裁判所の判断が放置されたまま(これを武彦さんは〝放置プレイ〟と皮肉っていた)。しかも、弁護団長の遠藤誠弁護士が亡くなって、求心力も結束力もなくなった感じで、毎回、色んな弁護士、学者、知識人などが来るのだが、これほど有名な事件の弁護団会議にしては、議論が煮詰まってしまっていて、全体に停滞感が漂っていたのはそこに参加した誰もが認めることであろう。むしろ、わたしとしては死刑囚・平沢貞通の養子になって、再審請求人になっている平沢武彦さんとの関係性を重視して、毎回、参加していた(会議が終わって、繁華街の池袋で皆と飲むのが一番の楽しみであった)。

 弁護団会議は当初は、立教大学の荒木伸怡教授の関係で、立教・池袋キャンパスの12号館地下会議室で行われていたが、荒木先生が定年退職でそこが使えなくなり、以降は部落解放同盟の会議室を借りるようになった。

 その解放同盟も、当初は六本木に同盟本部の建物があったが、八丁堀に移転となり、以降、今日までそこで毎月の会議が行われている。議論の中心は、次の二つに絞られている。一つは、犯行に使用された毒物が単なる青酸カリではない、ということをいかに証明するか。そして、もう一つが自白と目撃証言の不確かさ(任意性)ということ。毎回、それぞれの専門家が参加して、武彦さんを中心とした「平沢貞通氏を救う会」のメンバーも加わって議論をするのだが、なかなかすっきりとした答えは出ないのである。

 素人ながら青酸カリを飲まされたらほぼ瞬時に人間は死亡してしまうといった固定観念が誰にもあるが、事件では飲まされても生き残った銀行員が4名もいた。実際、青酸カリも濃度が薄かったり、時間が経った古いものだと、効果が弱いらしいのだ。つまり、松本清張らが主張して、いまや定説となっている遅効性の特殊な毒薬が犯行に使われたという主張がこれだと完全に揺らいでしまっている。毎回、毎回、同じ議論が繰り返され、懸案事項として先送りになっている。

 そして、次は心理学者が中心となって、自白の任意性、目撃証言の不確かさなどが説明され、極めて興味深いのだが、たとえ高名な心理学者による鑑定がなされたとしてもDNA鑑定のような決定打になるのかどうか。傍証には確実になると思うが、わたしには(また、弁護団会議に参加した多くの関係者も同意見だと思っているのだが)、それによって再審請求が認められる決定打にはならないのではないか。

 平沢が1925年(1892年生まれの平沢が33歳のとき)、板橋の中丸町に住んでいた時代、飼っていた犬が狂犬病になったことから家族で予防注射を受け、平沢だけが薬が合わなかったのか、その場で昏倒して意識が何日も戻らない状態になってしまう。それが原因で脳に傷害を負ってしまったのだ。

 

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  • 『若松孝二と赤軍 レッド・アーミー』
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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など