コラム 帝銀事件とは何だったのか-23 Vol.23 原渕 勝仁さん | GHQ.club

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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-23

VOL.23
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-23

 

 和多田進氏の『ドキュメント帝銀事件』にはB県ロッジと出てくるロッジは、佐伯省(Iさんのこと)の『疑惑α』には、新潟県湯沢町にある「岩原(いわっぱら)ロッジ」と、場所もロッジの名称も実名で登場している。

 ここは、昭和21年にアメリカ第五空軍立川基地の保養所として接収されて、昭和27年には接収解除された施設。当時は、B29の乗組員など立川の陸軍航空隊の米兵が70から80人滞在していて、日本人従業員も70人もいたかなり大きなスキー・ロッジで、このロッジの支配人が「大森精一」(佐伯省の『疑惑α』では柿畑誠一)であった。実際の所有者は「誠一」の姉の「秋子」の義理の兄の持ち物で、「秋子」自身は東京の旗の台に暮らし、車庫にはBMW1800CCがあったというからかなりのお金持ちであったのであろう。この「柿畑誠一」の本名も実はひょんなことから判明している。さらにその写真まで、わたしは手に入れているのだ。ネクタイを締めているが、米兵が着るような軍服にも見えなくはないのを着ている。そして顔は先ほどの〝土建屋風〟というよりは、どちらかというと、気の小さそうなごく普通のあまり特徴のない顔をしている。しかも、なぜか伏し目がちにまぶたが閉じられている。

 実は、この写真は平沢貞通・死刑囚の養子になった武彦氏から一時、預かっていたものをコピーして手元に残して置いたものだ。すでに現物は武彦氏に返還しているが、わたしは写真の裏に何者かによって書かれた文字もコピーして取材ノートに貼り付けて残している。そこには「23年1月」「○○(ここには本名)誠一」「林誠一」と書かれていた。また、同時に誠一の弟の写真も。こちらは見ようによっては、平沢貞通にも、歯科医のOにも似ていて、端正な顔立ちで俳優のブロマイドといわれてもおかしくないような写真なのだ。裏には「誠一弟」「○○栄司」と書かれていた。

 しかし、なぜ、武彦氏がこんな写真を持っていたのか。当初、Iさんは、市井の帝銀事件研究家として救う会にも出入りしていたとのことだから、Iさんから渡されたものかもしれない。

 その岩原ロッジはいまも存在しているのか。かなり大きなスキー・ロッジである。いまも、新幹線の「越後湯沢」駅で知られるスキー・リゾート地である。わたしは、オルタス・ジャパンのプロデューサーの運転する車に便乗して、その岩原ロッジを目指した。2011年2月8日のことである。

 関越自動車道路を一路、北上。スキー・シーズンの真っ只中ということで、周りの山々は白い雪で覆われていたが、真冬に珍しいぽかぽか天気で、高速道路も除雪されていて、快適な車の旅であった。この日の宿は湯沢グランドホテルを予約していたが、まずは「岩原スキー場」に直行した。このスキー場は、のちにあの明治の元勲・岩倉具視の子孫が手に入れて運営していたというが、いまは「ライフスタイル・サービス」という会社が運営しているということは、事前に調べがついていた。その事務所を訪問した。そこには送迎バスが止まっていて、それほど大きくはないがスキー場も確かに存在していた。しかし、なんと肝心要のロッジは数年前に取り壊されて影も形もなくなっていたのである。

 

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など