HOME > コラム > コラム 帝銀事件とは何だったのか-18 Vol.18 原渕 勝仁さん
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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-18
- VOL.18
- 原渕 勝仁さん
占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。
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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-18
それが2011年の年明け、のことであった。
その時点で、わたしはフジテレビ『ザ・ノンフィクション』で、恐喝未遂で執行猶予中の俳優・萩原健一氏を密着取材して、ある映画祭で賞を受賞していた。そして、若松孝二監督と北朝鮮、レバノンを訪問して、ロッド空港乱射事件の岡本公三やよど号グループと邂逅し、スクープ映像をものにしていた。そして、帝銀事件。
これに関しては、誰にも負けない知識と人脈を持っていた。その帝銀事件をドキュメンタリー・ドラマに仕掛けようと、わたしは企画書を作成して、フジテレビおよびテレビ朝日の担当者に頻繁に接触した。しかし、簡単に企画は通らなかった。製作会社に所属した以上、なんとか自分の企画を成立させたい。帝銀以外にも、いろんな興味のある企画を仕掛けるべく、このときは活動した。
一つは、「黄金の三角地帯」を取材するもの。実は、「オルタス・ジャパン」の社長である小田昭太郎氏には、著書がある。それがビルマ(現在のミャンマー)のシャン州に拠点を置く〝麻薬王〟クンサーを取材した、その名も『クンサー』(情報センター)である。わたしは、この著書も以前に熟読していた。その頃から同じ臭いを感じていた。その小田氏の紹介で、ミャンマーに詳しい人物と接触し、そのとき話題になっていたタイの元・首相であるタクシンを取材する企画を進めていた。
同時に、これは帝銀ともいつかはつながるかもしれないと、731部隊研究も続けていた。ちょうど、その年の始めに、新宿区戸山にあるもと軍医学校跡地でみつかった人骨の話題がふたたび噴出していたのである。オルタスには、わたしの目標とも言うべき凄いジャーナリストがディレクター兼プロデューサーとして活躍している。それがTBS『報道特集』でキャスターとしても活躍していた吉岡攻氏である。その吉岡氏のアドバイスもあって、わたしは、この人骨問題を追いかけることになるのである。オルタスの若い女性ディレクターと、新しい人骨発掘現場を取材した。彼女もカメラを回したが、また、各局のテレビ・カメラも入っていたが、そんな中でも、わたしは臆することなく、自分の小型ビデオ・カメラを回していた。旧・陸軍軍医学校跡地で、出所不明の人骨が見つかったのは1989年のことである。今回は、そのすぐ近くであるが、かつて石井四郎がかかわっていた防疫研究室の跡地とあって、もしも、ここから人骨が発見されれば、あの731部隊の人体実験とのつながりも出てくると、マスコミの興味はいつになく高まっていた。しかし、このあとも厚生労働省の予算で、発掘調査が行われるが、人骨は発見されなかった。もと看護士の女性の確かな証言に基づいたものであったが、それでも人骨は発見されなかった。当然ながら何かの番組にできないかと思っていたが、不発に終わってしまった。
テレビ・ドキュメンタリーの企画とは、特に硬派で知的レベルの高いネタは簡単には決まらない。まさに失敗と徒労の連続である。そして、帝銀の企画も結局は、どこの局も、乗らなかった。事件が古いということもあるが、決定的な新事実が見つからない限りは難しいというのが、いまのわたしの実感である。
- プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など