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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-14

VOL.14
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-14

 

 確か、その日はもう一人、同行者がいたが、わたしがIさんに会うことになった詳しい経緯はここでは割愛する。つまり、その人達は、武彦さんではなく、別の再審請求人を立てるというIさんの依頼を受けて動いていて、結局、それは実現せず。それだけでなく、それに関わったある女流弁護士と平沢武彦氏との大喧嘩にまで発展するのだが、それについては、いつかお話しする機会もあることだろう。

 ……われわれが訪問したことは、Iさん本人の依頼で来たことで、勿論、本人の了解のもと、その部屋を訪問したわけだが、施設を運営している会社からの報告でIさんの家族、確か三男の大学教授の妻が自宅から駆けつけて来た。介護施設に入っているお金持ちの老人を騙す詐欺師か何かに思われたのか。もし変なことをしたら夫はある大学の法学部の教授ですからと、その夫人から夫の名刺まで、われわれは渡されている。

 同行者は、別にそのことが原因ではなく、つまり、騒動になるのが面倒だからではなく、そもそも帝銀事件の真犯人説に興味はなかったらしく、「あとは原渕くんに任せたから」と、早々に帰ってしまった。

 残されたわたしは、ここが勝負とばかり、ショーケンこと萩原健一や若松孝二監督に密着した小型のビデオ・カメラを回しながら、帝銀事件の真犯人と、Iさんが確信するその根拠をさまざまな角度から聞きだして行った。

 こののちも、わたしは何度か、この小田急線沿線の介護施設を訪問した。途中には、夫人が亡くなって、一人、寂しくしているIさんを励ましながらも、毎回、話を聞いた。この過程で、どうやって手に入れたのか、事件当時の40代頃のOの写真を見せられたこともあった。しかし、彼の話は、その自費出版された本以上のものでも以下でもなく、Oが本当に帝銀事件の犯人であるという決定的な証拠はなく、確かに、これをこのままテレビにしたらテレビ界から抹殺されることはないかも知れないが、もし冤罪であれば取り返しのつかないことにはなるなと思わせた。

 帝銀事件に関しては、一度、TBS「報道特集」でやったが、そのあと、NHKやテレビ朝日など、硬派な報道番組をやっている局員に何度か話を持ち込むが、新事実がないと企画を通すのは難しいと難色を示される。そこで、わたしは、ある有名なテレビ製作会社に所属したことをきっかけに、会社のお金で(これまで、すべて自費で調査をして来たが、限界を迎えていた)、〝怪しい〟〝不思議な〟歯医者Oのことを独自に調べることにしたのである。

 すでに2011年になっていた。年明け早々に制作会社のプロデューサーと車で、あのGHQの岩原(いわっぱら)ロッジがあった越後湯沢に向かった。何日か前に降った雪が残ってはいたが、ぽかぽか陽気で、快適な車の旅であった。しかも、当時を知る関係者に具体的な話を聞くことができ、しかも、Oが越後湯沢に残して行った具体的な証拠まで得ることができた。

 この時点で、まず言えることは、平沢貞通とOは、この越後湯沢で会っていたということ。しかも、そこには愛人の鎌田りよも同行していたという事実だ。さらに水彩画の巨匠である石井伯亭とOとの関係も決定的となるのである。

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など