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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-54

VOL.54
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-54

 

 平沢は供述で、3時10分前に池袋駅に到着して、駅の西口を出て、立教大学の裏の道を歩いて山手通りまで出て、そこから帝銀椎名町支店が目視できたが、なぜか遠回りをして相田小太郎方にGHQのジープが止まっているのを目撃したと話している。しかし、この供述が平沢を真犯人にするために作られた供述であることは誰の目にも明らかなことなのである。

 そもそも時間がないのになぜ、遠回りをする必要があるのか。人間だから気まぐれに遠回りをすることもそりゃあるでしょう。しかし、これから銀行強盗をしようという人間がそんなに心に余裕があるものなのか。実際に犯人が「相田さん方で赤痢が発生して」と話していたのは生き残った吉田支店長代理が覚えていたことで間違いのない事実。であるならば、真犯人の平沢がその事実を知らなければ辻褄が合わないということで、平沢がGHQのジープを見たということに検察官側としてはせざるを得なかった。

 わたしは、本当の真犯人が準備のために椎名町周辺を下見しているときに偶然、GHQのジープを目撃したのではないかと前号に書いた。でも、それも考えてみれば当時の検察官と同じで、確実な証拠があるわけでなく、吉田支店長代理の証言にひきずられた都合のいい推論に過ぎないことに気づかされている。なぜ、犯人が相田方の井戸の存在を知っていたのかは、だから今現在も謎なのである。

 それでも少なくとも平沢の供述がいかに不自然であるかを確認するために武彦さんと平沢の供述に沿って、池袋から椎名町まで実際に歩いてみたことがあった。あれはわたしがTBS『報道特集』で帝銀事件を番組にした翌年のこと。わたしの母校の立教大学の太刀川記念館でイベントをやったことをお話したが、その前日にイベントを盛り上げる意味もあって関係者が集まって、集団で歩いたのである。そのことは毎日新聞でも取材されて、翌日の朝刊に載ったことを記憶している。わたしと武彦さんのほかに救援連絡センターの山中幸男氏、当時、立教大学の教授だった荒木伸治教授など10数人。なかには事件に興味のある一般の方も参加して、いま思うと楽しい思い出となっている。

 集合したのは池袋西口公園。東京芸術劇場の前からスタートした。わたしが立教に通っていた頃は、まったくの広い空き地であったが、聞くと戦後の一時期に闇市が密集していた場所。事件当時もそんな雑然とした喧騒の中を通り抜けて、立教大学のキャンパスに。いまではフェンスに囲まれたキャンパスだが、それは学生運動が華やかなりし頃、大学当局がロックアウトのために施設したもので、恐らく、当時はなくて、一号館(モリス館)やチャペルなども通りから見えたのかもしれない。

 正門がある立教通りの方ではなく、立教大学の裏の道を平沢は歩いたと供述。わたしが学生の頃も、武彦さんと歩いた2008年当時も立教大学の裏手は細い道を挟んで民家が密集していた。平沢はその道を歩いて、当時は「改正道路」と呼ばれていた山手通りにぶつかったと。

 最近になって、再び、あのあたりを歩いてみると、その変化に驚かされた。事件当時の、そして、わたしが学生の頃にあった住宅街は忽然と消えていて、なんとかなり広い自動車道路になっていたのである。

 

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など