HOME > コラム > コラム 帝銀事件とは何だったのか-40 Vol.40 原渕 勝仁さん
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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-40
- VOL.40
- 原渕 勝仁さん
占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。
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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-40
斉藤充功さんの著作は、まず、『謀略戦 ドキュメント陸軍登戸研究所』を読んでいたし、中野学校に関しても、『諜報員たちの戦後 陸軍中野学校の真実』を、わたしはノートをとりながら熟読していた。実は中野学校に関しては、『日本の埋蔵金』の著書で知られる畠山清行(せいこう)の『秘録 陸軍中野学校』が最も有名で、あの市川雷蔵の大映映画『陸軍中野学校』の原作でもある。わたしは、この当時出た本も近くの古本屋でみつけて手に入れていたが、後年、ノンフィクション作家の保阪正康・編集という形で、新潮文庫からこの本が再販されている。それも、わたしは熟読していた。
それでも斉藤さんの陸軍中野学校に関する取材は群を抜いていた。斉藤さんとは、その中野の講演会のあとも親睦会で少し飲んだが、「君の中野学校についての知識はまだまだだ」と言われたものの、まだ若い同業者のわたしに対する余裕のようなもので、概して好意的な雰囲気でお酒を酌み交わした記憶がある。
直後にわたしは、雑誌の『実話ナックルズ』によど号の日本人村の訪問記を掲載したのだが、その編集者の紹介で再び、斉藤さんと食事を共にしたことがあったが、それっきり会う機会を逸している。この間にも、斉藤さんは精力的に中野学校についての単行本を何冊も出している。わたしは、そこに帝銀事件の謎を解く鍵が隠されていないか。毎回、目を皿のようにして斉藤さんの著書と向き合っているが、さすがにみつかってはいない。
また、この「帝銀事件と731部隊と陸軍中野学校」に関しては、もう一人、凄い先人がいる。それがわたしと同じようなテレビ作家で、ジャーナリストでもある近藤昭二さんである。この方も、正直、本当に凄いミステリー・ハンターである。わたしは、この方の作ったテレビ番組をどれだけ見て、感銘を受けたか数え知れない。帝銀事件だけではなく、戦後の謎の事件に関して圧倒的な知識と人脈と新証拠を持って解明する番組を作って来た巨人だ。
その最大のものは、確かNHKの番組で、『声』というタイトルだったと思うが、あの1963年に発生した「吉展ちゃん誘拐事件」。その事件を担当した刑事の平塚八兵衛が取調室で被疑者の小原保を自白させるまでを録音した本物のテープで再現した番組だ。これは本当に凄かった。だって、単なる再現VTRなどといったものではなく、本物の録音テープが番組の始めから終わりまで使われていたわけだから。誰かが言っていたが、近藤さんの自宅には、こういったどこから手に入れたのかわからないような凄いものが自宅にいくつも保管されているのだと。それらを手に入れるのに色々と事件関係者ともめたりすることもあるのだそうだが、世紀の謎の事件の真相を掴むための近藤さんの執念というか営為は他の追随を許さない凄いものだ。
わたしは、だからたとえどんなに毀誉褒貶が多かろうと、近藤昭二さんには常に脱帽している。その近藤さんも帝銀事件からいまでは七三一の権威といってもいい存在になっている。そして、勿論、近藤さんも陸軍中野学校を視野に入れて調べているらしいことをもれ聞いている。なんとか、米軍の資料の中に帝銀事件と陸軍中野学校に関する秘密書類がないかを調べているやに聞いている。が、そこにはやはり、大きな壁があるようである。
- プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など