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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-38

VOL.38
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-38

 

 わたしにとっては、以前から面識のあった市民活動家の根岸恵子さんが進行役を務めるなど、その会の中心的な人物であったこともあって、とても気軽な気持ちで、毎月行われる七三一の会合に参加していた。場所(ピープルズ法律事務所)を提供してくださっている南典男弁護士の人柄も間違いなくあって、毎回、とても楽しい集まりとなっていた。

 こういった会合では、終わって必ず近くの居酒屋で交流会をやるのが通例みたい。新宿御苑の近くということで、新宿通りに面した中華料理店に入って、7、8人のメンバーで、まずはビールで乾杯。セットになった比較的安価な中華料理をみんなで食べながら色んな話をした。そこには必ず南弁護士も「まだ、やらなきゃいけない仕事が事務所に残っている」といいながらも、後半から参加してくださり、南弁護士がボトル・キープしている紹興酒を随分と戴いたものである。

 そこに集まった社会活動家の方たちは、本業は学校の社会科の先生であったり、地方公務員の職員であったりして、どの方も社会意識が高く、また、人柄のいい人達ばかり。わたしのことも歓迎してくれているのが肌で感じられた。わたしがよど号の取材で北朝鮮や、若松監督とベイルートに行って番組を作ったりすると、必ず見てくれていて、好意的な感想を言ってくれたりしていた。また、時には彼ら自身であったり、その活動母体の組織であったりが七三一関連のイベントを企画して、わたしをそこに招いてくれたりもした。

 そんな中で、特に思い出に残っているのが、〝人骨の会〟の鳥居靖さんが毎年、花見を兼ねて七三一関連の場所を歩く、その名も〝お花見ウォーキング〟である。一度は、あの謎の人骨が発見された新宿区戸山を歩いた。ただ、歩くのではなく、充分にリサーチをした鳥居さんや、根岸恵子さんがとても熱心に行く場所、場所で解説をしてくれるのだ。ただ、本で読むだけの知識ではなく、実際の現場を歩きながらの勉強がいかに充実したものであるかを実感したものである。いまは、人骨がみつかった跡地には国立感染症研究所(かつての国立予防衛生研究所)の建物が建っているが、その建物の一角にくだんの遺骨が14個の桐の箱に入れられて大切に保管されている事実もその時に知った。御影石のような黒い大きな石碑もそこに建てられていて、この事実を風化させてはいけないという関係者の熱い思いが感じられた。

 また、近くにあの石井四郎が住んでいた場所があるということで、向かったのだが、国立国際医療センター近くの、ごくありふれた二階建てのアパートがそれだと教えられて感慨深い気分にもなったものである。噂では、石井はこの場所で怪しげな旅館を経営していて、そこにはよくGHQの関係者が何が目的なのか足しげく通っていたとのこと。石井四郎に関しては、戦後になっても、こんな人格を疑われるような悪い噂ばかりで、ある意味、わかりやすい人物だが、多分、人間なのだから苦しんだり、悩んだり、当然、したはずである。しかし、石井四郎に関して、そういった人間的なエピソードが皆無なのがわたしは不思議でならない。彼の悪魔性、数々の悪行はもうわかったからもっと〝人間〟石井四郎に迫りたいけど、いまとなってはそれも深い霧の彼方に見えそうで見えないのである。

 

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  • 【原渕勝仁の著書】
  • 『若松孝二と赤軍 レッド・アーミー』
  • 情況新書011/世界書院・発行
    定価1200円+税

 

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など