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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-16

VOL.16

原渕 勝仁さん

オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-16

　ある時期、わたしは外務省の渡航自粛を無視して北方領土に潜入したり、台湾マフィアの取材から発展して、中国の福建省にトカレフの密売現場の取材に行ったりして、危険な取材ばかりしていた。

　その延長線上にあったのが北朝鮮であった。1990年代に入ると、当時の自民党副総裁の金丸信による北朝鮮訪問もあって、北朝鮮は最大の関心事であった。そのときも、当時、放送作家であったわたしは、ある制作会社のディレクターと北朝鮮取材を画策していた。そのとき、出会ったのがよど号メンバーの帰国支援をしていた救援連絡センターの山中幸男氏であった。しかし、そのとき、企画は実現しなかった。

　その山中氏と再会したのが、平沢貞通氏を救う会での会合であった。確か、2008年に入ってすぐのことであったと思う。前年にTBS『報道特集』で帝銀事件の番組をやり、平沢死刑囚の養子になっていた武彦さんと仲良くなり、わたしも救う会のメンバーになって、会合に頻繁に参加していた。そこに癌で長期入院を余儀なくされたもとNHKのディレクター・片島紀男氏の代役として事務局長として活動に参加してくれたのが山中氏であった。

　毎年、帝銀事件の発生した1月26日に武彦さんが中心となってイベントが企画されていた。わたしも2008年からそれに参加していて、その年は、立教大学の荒木教授の尽力で、立教にある太刀川記念館を会場として行われた。わたしが在学中にはなかった施設で、もとソニーの創立メンバーのひとりで、立教OBの太刀川正三郎の遺族の寄付で建てられた施設である。その二階のホールを借り切って、帝銀事件をいまの裁判で裁いたらどうなるのかという模擬裁判を行ったのである。

　放送作家ということで、このとき武彦さんに頼まれて、わたしが台本を書き、弁護士役で出演してくれたのが、人権活動家で「人権110番」で知られる千代丸健二氏であった。先年、この千代丸氏も癌で亡くなるが、生前の千代丸氏はとにかく、元気いっぱいよくしゃべる人物で、本当に憎めない愛すべきキャラクターの人であった。さきほどの山中氏とこの千代丸氏の紹介ということで、ある有名なテレビ製作会社にわたしは所属することになるのだが、それが2011年が明けてすぐのことであった。

　かつて日本テレビで、深夜のバラエティ番組に『11P.M.』という大橋巨泉が司会をつとめる番組があった。日本テレビとよみうりテレビが交互にやっていて、よみうり担当の司会者は作家の藤本義一であった。わたしが小学校高学年の頃に始まった番組で、女性のヌードが出てきたりして、中学生の頃など、親に内緒で深夜にドキドキしながら視聴していた記憶がある。しかし、いま考えると大人の知的なバラエティ番組で、それこそ現代史の謎に挑むといった企画をしばしばやっていた。確か、三億円事件など何度も採り上げて、推理作家の小林久三がどんなスクープ情報をしゃべるのか、たとえば真犯人と目されるS少年のことなど、本当にわくわくしながら見ていた。

　実は、千代丸氏はこの番組の中で、帝銀事件を番組にし、自らリポーターとして出演もしていたのである。そして、この『11P.M.』のもとディレクターで、日本テレビの局員であった小田昭太郎氏が作ったテレビ製作会社がオルタス・ジャパン。わたしはそこに所属することになるのである。

プロフィール：原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴：1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作／TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入！よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など