東京に雪の降った1月のある日、雪の日陰に残る寒い中、ＪＲ線「中野駅」北口を降り、アーケード街「サンモール」とブロードウェイを抜け、ぶつかった早稲田通りを西、そして一つ目の「中野体育館北」信号を北上すると、10分ぐらいで法務省矯正研修所東京支所に着いた。その先、東京都下水局中野処理場との間の道を西へ入っていくと、直ぐの所に、法務省矯正研修所のフェンスで隔てられた敷地内に、「豊多摩刑務所の表門」が保存されている。さらに進むと平和の森公園があるのだが、公園に入らず、研修所敷地を回り込んで、反対側からも表門を撮影した。
　ところで、ここの沿革をざっと紹介しよう。
　そもそものルーツは、江戸の「小伝馬町牢屋敷」で、明治に入って1875年に市ヶ谷に移転している。そこが手狭になったため、1910年ここ中野に写され、豊多摩監獄（22年に豊多摩刑務所に改称）となった。25年制定の「治安維持法」による政治犯、思想犯が多く収容されたことで、よく知られる。45年5月の東京大空襲で焼け、囚人は宮城刑務所に送致されたという。46年３月にはＧＨＱによって接収、10年間、米陸軍ストッケードとして使用され、57年になって接収解除・返還され、中野刑務所となる。そして、83年に閉鎖され刑務所としての幕を閉じる。
　どんな人物が収容されたかというと、大杉栄（在獄期間1919～20年）、荒畑寒村（同26年）、亀井勝一郎（同28～30年）、小林多喜二（同30～31年）、三木清（同30年、45年3月に再検挙されて獄死）、中野重治（同30年、32～34年）、埴谷雄高（32～33年、41年）、河上肇（33年1月に検挙され未決囚として収容される。6月に市ヶ谷刑務所に移る。刑確定して10月から37年まで小菅刑務所で服役）、戸田城聖（43～45年）ら。
　近年で著名なエピソードとして、72年に懲役3年8ヶ月で中野刑務所に収容された藤本敏夫が歌手の加藤登紀子と獄中結婚して話題を呼んだことがある。そのいきさつは、共著書『絆』（藤原書店刊）に綴られている。

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  豊多摩刑務所正門をのぞむ
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  豊多摩刑務所の正門跡

豊多摩刑務所正門の裏側

（文責：編集部ＭＡＯ）