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HOME > コラム > コラム 帝銀事件とは何だったのか-49 Vol.49 原渕 勝仁さん

帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-49

VOL.49
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-49

 

 あれはいつのことだったのか? 正確に日時を特定することはできないが、わたしがTBS『報道特集』で帝銀事件を番組にして、死刑囚の平沢貞通の養子になった武彦氏と仲良くなり、彼と頻繁に会っていた頃のこと。
帝銀事件に関係する貴重な資料を彼から見せられたことがあった。あの『甲斐手記』のコピーであるとか、平沢が小樽の料亭に頼まれて描いた春画のカラーコピーであるとか。しかし、そんなものは武彦氏の本の中に写真入りで紹介されていて、特に珍しいものではないことがのちに判るのだが、なかでも、これは秘蔵のビデオ・テープだといって見せられたもの。これは所謂「隠し撮り」された映像なのだろうか? 見ようによってはそんな感じもするが、確かに貴重な映像であった。

 そこに映っていたのは老境に達した平沢の長女・静子の姿であった。どうやら静子は自分が出た女学校に同窓会か何かで訪れているらしく、ビデオ・カメラを回している人物に懐かしい昔の話をしながら歩いている。もしこの映像をテレビで放映するとしたら間違いなく、モザイクがかかっていてどんな顔なのかまったくわからないのだろうが、そのとき、わたしはしっかりと静子の顔を見た。そのとき、彼女は何歳だったのか定かではないが、頭髪が真っ白であったことが強烈に記憶に残っていた。死刑囚の父親を持ったことによって、その後の人生がどんなにか苦労の連続であったことが想像された。

 実は、この映像は武彦氏自身が撮影したもので、見ていると武彦氏の声も入っていて、武彦氏がビデオ・カメラを回していることを静子が了解している感じもしたがはっきりとはしない。プロのカメラマンが撮影した映像ではないので、テーブルにカメラを置いたまま、静子の顔を下からあおるように撮影していて、それがなんとなく「隠し撮り」的な雰囲気になっていたのかもしれない。しかし、わたしはこういった事件の本質とは関係のない、ワイドショー的な興味はいけないことのようにも考えていた。しかも、わたしはいかなる状況においてもテレビマンとして、「隠し撮り」は邪道であると思っている。したがって、そんな「隠し撮り」の映像を使って番組を作ろうなどと考えたこともない。武彦氏は別にこの映像を使って何か、わたしに番組にしろともどうとも言ったわけではないが、なぜ、彼がこういった映像を撮影したのか。そして、それをなぜ、わたしに見せたのかがいまもって理解できていない。

 しかし、「帝銀事件とは何だったのか」というテーマの中で、あの事件によって人生が翻弄された平沢の家族のことについて、特に彼らのその後の人生について、わたしは知りたいと思った。わたしが聞いているのは事件後に子どもたち全員が平沢の籍から離れたということ。長女の静子は昭和11年に、二女の曄は昭和19年に、それぞれ結婚して籍を離れているが、長男の達也は昭和23年12月18日、二男の瞭は昭和23年11月15日、三女の窕子は昭和24年2月4日に除籍。二男と三女は母親のマサの実家である風間家に養子に入って、風間姓を名乗っていたと。

 この風間姓に関しては、マサの実の弟で、平沢が警察・検察の取調べの過程で、何度も名前を出している「風間龍」の存在がある。平沢はこの義理の弟にかなりの信頼を置いていたようなのだ。

 

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など