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帝銀事件とは何だったのか

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MYSTERY
HUNTER帝銀事件とは何だったのか-36

VOL.36
原渕 勝仁さん

占領時代のミステリー・ハンターあらわる!
占領時代の事件、今もって解明されておらず、
「〇〇は無実である」という雪冤の運動は続いている。
ミステリー・ハンター 原渕 勝仁氏がそれら謎を多角的に解明する。

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オキュパイド・ジャパン・ミステリー・ハンター
帝銀事件とは何だったのか-36

 

 大学時代、この映画『日本列島』を見た時点のわたしには、GHQの裏部隊についての知識が皆無であった。(キャノン機関のことなど)また、登戸研究所についてもほとんど知識がなく、戦時中に登戸で何が研究されていて、どんなことが行われていたか想像すらできていなかった。だから当時、これを見ても何も感じず、記憶にほとんどのこらなかったのだろう。

 ある意味、知識というものは、知識がないということは恐ろしいこと。つまり、何も考えられなくなるわけだから。・・・映画『日本列島』のなかでは、1959年3月10日に発生したBOACスチュワーデス殺人事件が時代背景の一つとして描かれている。これは実際に発生した実話。イギリスの航空会社に採用されたばかりの日本人スチュワーデスの武川知子(27歳)が杉並の善福寺川の下流で死体で発見される。(映画のなかでは、このように勿論、実名が使われてはいないが)逮捕されたのはカトリック杉並ドンボスコ修道院のベルメルシュ・ルイス神父。しかし、神父は捜査の途中でベルギー本国に帰国。事件は未解決のまま終わってしまう。・・・この事件に関しては、松本清張も小説『黒い福音』を書いているが、わたしは大映で、当時、映画評論家でもあった猪俣勝人(かつんど)が監督した映画『殺されたスチュワーデス 白か黒か』を、やはり、文芸坐で見ていた。かなり、迫真の内容で見ごたえがあったと記憶している。

 しかし、デイテールまで覚えているわけではない。また、この事件の背後にM資金を匂わせるような描写が映画『日本列島』ではあったが、つまり、スチュワーデスは神父との痴情のもつれが原因で殺されたのではなく、裏にはもっと陰謀があるかのような描き方をしていたが、そこは確かにフィクションだろう。それよりも、わたしが最近になって、映画『日本列島』をDVDで観て、驚いたのは、登戸研究所に関して、かなりの知られざる事実を何気なく、提示していることである。

 陸軍第九研究所、別名・登戸研究所には1課から4課まであって、1課はあの風船爆弾、2課が帝銀事件に大きくかかわる毒薬の研究、そして、3課はというと、なんと謀略用に外国紙幣の偽札を製造していたというのである。そこにドイツ製の高性能な印刷機「ザンメル」が登場するのである。

 熊井監督はくだんのエッセイ『映画と毒薬』のなかで、登戸にあったその印刷機「ザンメル」は、戦後、株式会社・凸版印刷に払い下げられたが、その後、それがどこに行ったのかは行方不明、と。ただ、登戸の当時の幹部の一人、山本憲蔵主計大佐が1950年5月からCIAの要請で、横須賀米海軍基地内で印刷偽造の技術指導をしていた。さらに1952年6月に渡米して、サンフランシスコの海軍基地で働いていたことなどが判明していると。

 実は、これらのことは、わたしはもっと詳しく知ることになるのであるが、そこにはノンフィクション作家の斉藤充功(みちのり)さんの著作との出会いがある。武彦氏から、ある日、渡された本。それが斉藤充功さんの『謀略戦 ドキュメント陸軍登戸研究所』(時事通信社)であった。そして、その斉藤さん本人とも、ある日、出会うことになるのである。

 

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  • 【原渕勝仁の著書】
  • 『若松孝二と赤軍 レッド・アーミー』
  • 情況新書011/世界書院・発行
    定価1200円+税

 

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プロフィール:原渕 勝仁(はらぶち・かつひと)
略歴:1956年、香川県坂出市生まれ。立教大学法学部中退。
代表作/TBS 『報道特集』「戦艦大和 幻のフィルム」「帝銀事件 絵探しの旅」「連合赤軍事件 36年目の真実」フジテレビ『ザ・ノンフィクション』「ショーケンという孤独」テレビ朝日『ザ・スクープSP』「よど号ハイジャック事件 40年目の真相」WOWOW『ノンフィクションW』「映画監督・若松孝二 17才の光と影」「ミャンマーの幻の格闘技ラウェー」「遥かなる北極点 孤高の冒険家・荻田泰永」テレビ朝日『テレメンタリー』「決着 若松孝二と岡本公三」フジテレビ『NONFIX』「フランスの城で男が描く夢 フレスコ画家・高橋久雄の挑戦」「受け継がれる心と形 狂言・和泉流宗家」フジテレビ『ニュースJAPAN』「スクープ潜入!よど号日本人村」テレビ東京『未来世紀ジパング』「北朝鮮・ケソン工業団地」など